2017年7月 日々の想い(44)「認定こども園・幼稚園・保育園」

甲子園福音

2017年7月2日発行 122号

 

日々の想い(四四)「認定こども園・幼稚園・保育園」

 

むこがわ幼稚園が幼稚園型認定こども園となって、はや三年目を迎えています。
この間、待機児童解消の問題に取り組むために国を挙げての保育所作り、更には認定こども園への移行促進等が進められています。保育士免許を取りやすくしたり、保育士以外でも簡易な講習を受ければ保育の補助が出来るような制度が設けられたりもしています。

そのような中で、昨年度から兵庫県では、認定こども園関係団体協議会の主催による「認定こども園園長等研修会」が開催されています。兵庫県下では、この研修に参加することで幼保連携認定こども園の園長資格の要件が満たされたことにもなりますので、わたしも一八科目(三〇時間)あるこの研修会に参加したのです。
五〇〇人くらいの参加者中、保育現場の経験者は全体の二割くらいで、そのほとんどは園の経営のみに関わっている理事長、園長でした。
研修最終日に研修で取り上げられた幾つかのトピックを巡って、六人ずつのグループトークがあったのですが、その時にわたしのグループにいた園長・理事長のほとんどが研修内容を理解していないことには、本当に驚きました。

例えば、幼児教育の根幹である「環境設定」ということについても、「環境設定って何のこと?」という質問が出るありさまで、学ぶためというよりは、ただ単に資格獲得のためだけに来ている方が多いことがよく分かりました。

そのグループトークの時に、ある保育園型認定こども園の理事長が、このように言われました。「保育園から認定こども園になったために、『幼児教育をやれ』ということを言われているのだが、『幼児教育』って何をやったら良いのかよく分からない。太鼓なんかを教えることが幼児教育なんですか。』」
また、同じように保育園から認定こども園になった他の園の園長もこう言われました。「教育しないといけないということで、今、主任と一緒に教育指導案を考えているんだけれども、どうやって作ったら良いのかいつも悩んでいる。」

『幼保連携認定こども園教育・保育要領』によれば、認定こども園は、こどもたちに教育・保育を行うことが定められています。ところが実際には、この理事長、園長の言葉に表れているように、保育園から認定こども園に移った園では、幼児教育とは何かが分からず、実際には、保育園時代とほぼ同じ保育(=養護)のみが行われているのが実情なのです。

『教育・保育要領』で云われる「保育・教育」については、これは分けることの出来ない、一つのものを表わしていると言う方もいます。しかし、幼稚園の現場において「幼児教育」という場合には、日案、週案、月案という指導案を保育者が考え、それに基づいて必要な環境を設定し、こどもを育てて行く、ということが行われているのです。それはただ単にこどもを自由に遊ばせるということではなくて、きっちりした見通しを持って、目指すべきこどもの姿を思い描きながら、遊びを通してこどもを育てる、そのような「教育」の業なのです。

むこがわ幼稚園は幼稚園型の認定こども園となり、将来的には幼保連携認定こども園となって行くかもしれません。しかし、たとえそうなったとしても「幼稚園」として守ってきた「幼児教育」の姿勢を失わず、これを固く保って行きたいと考えています。

なぜなら、幼児教育とはそもそもキリスト教から生まれたものであり、「キリスト教保育」こそが、幼児教育の根っこに宿っているものだからです。
形態は変わっても、教会が生み出した「幼稚園」として、一人ひとりの命を大切にする「キリスト教保育」を高く掲げながら歩んで行く、そのような園でありたいのです。

(甲子園教会牧師・むこがわ幼稚園園長 佐藤成美)