「主は国々の争いを裁き、多くの民を戒められる。彼らは剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない。」(イザヤ書2章4節)
『サイボーグ009』という石森章太郎の名作漫画がありました。その中で、主人公たちが戦う相手が、「ブラックゴースト団」と呼ばれる武器商人です。
「サイボーグ009のブラックゴースト団」でネット検索をかけると、このような説明が出て来ました。
「ゼロゼロナンバーサイボーグの生みの親にして最大の敵。
世界に死と戦争を撒き散らし、利益を得る『死の商人』。兵器製造企業やそれらに投資する銀行家などの組織や団体が資金を出し合って設立した世界規模の軍産複合体である。軍需産業を営みながら、民族運動や反政府運動を影から操り世界情勢をも操作している。そのため、非合法組織だが冷戦下にある各国(の上層部)からはその存在を黙認されている。
その最終目的は、彼らの開発した商品により人類の滅亡(核戦争)を回避した形でアメリカとソ連の全面戦争を引き起こし、東西の両大国が弱体化し国際的指導力を失った際に台頭、世界を支配することである。」
最後の「世界を支配する」は、漫画チックな表現ではあるにしても、その他の説明はなにか非常に現実味を帯びたもののように思えます。
昨年の一二月一六日、岸田首相が安全保障条約関連三文書の改定を閣議決定しました。
具体的にいうと、外交・防衛の基本方針である「国家安全保障戦略」、防衛の目標と手段を示す「国家防衛戦略」、防衛費の総額や装備品の整備規模を定めた「防衛力整備計画」の三つです。
そして、そのうちの「国家安全保障戦略」と「国家防衛戦略」には、敵のミサイル発射基地などをたたく「反撃(=攻撃)能力」を保有することが明記されたのです。
そしてまた、統一地方選への思惑によって時期についての明言は避けられたものの、今後、防衛費増額のための増税が行われる予定となったのです。
防衛費は五年間で総額四十三兆円。その防衛費増額のため、二〇二七年からは毎年4兆円の追加財源が必要であり、そのうちの一兆円余りを税金で賄うのだそうです。
では、その増額された防衛費で、日本は何を買うのでしょうか。それが「安全保障政策の大きな転換」と指摘されたところの「敵基地反撃(=攻撃)能力」をもつ、アメリカ製巡行ミサイル「トマホーク」です。一発三億円のものを数百発注文するようです。
以上、新聞やネットニュースのようなことばかり書き連ねましたが、何を言いたいのかと言いますと、さぞかし某国の「ブラックゴースト団」が喜んでいるだろうな、ということです。
武器を造って武器を売る、そしてそのために、武器を売れる環境を作り出すのが武器商人です。そのような力に、日本政府が手玉に取られているような気がします。
しかし、当たり前のことですが、そんなことには一切触れることなく、岸田首相はこのような発言をしいています。「外交での説得力にもつながると考えて、防衛力を整備している」、「今を生きる我々が、将来世代への責任として対応すべきと考えた」と。
「外交」とは、武力をちらつかせて相手に圧力をかけることなのでしょうか。今を生きている大人たちが将来を生きるこどもたちに対して果たすべき責任とは、武器を購入するために増税し、さらには、理由はどうであれ武力攻撃、つまり戦争が出来る体制を整えて行くことなのでしょうか。
聖書の言葉の多くは、「戦争」がその背景にあります。預言者イザヤが生きていた時代にも、戦争はありました。そしてそのために、多くの無辜の民が苦しみ、悲しんだのです。
だからこそ預言者は、このような神の言葉を語りました。
「地を踏みならした兵士の靴、血にまみれた軍服はことごとく火になげこまれ、焼き尽くされた。ひとりのみどりごがわたしたちのために生まれた。ひとりの男の子がわたしたちに与えられた。権威が彼の肩にある。その名は、『驚くべき指導者、力ある神、永遠の父、平和の君』と唱えられる」と。
その預言の言葉のとおり、救い主イエス・キリストはやって来られました。そしてキリストは、その身にわたしたち人間の怒りや憎しみ、裁きを背負うことで、剣を捨てること、戦いを捨てること、赦し合い、愛し合うことを教えられたのです。
一年の初めにあたり、世界の平和を祈ります。武器を買い、戦いを学ぶのではなく、平和を学び作り出す、そんな大人のわたしたちでありましょう。
(甲子園教会牧師・むこがわ幼稚園園長 佐藤成美)