2022年3月 日々の想い(77)「サンタさん、あなたは一度死んでいる」

 季節外れの話題で恐縮なのですが、毎年幼稚園の2学期の終園日礼拝には、サンタさんのお話をすることにしています。

 と言いますのは、せっかくこどもたちが幼稚園でクリスマス礼拝を守って、「クリスマスはイエス様のお誕生日だ」と覚えても、実際にクリスマスの日が来ると、それがたちまち「サンタさんの日」になってしまうからです。

 ですから、クリスマス前となる終園日の礼拝には一応サンタクロースの話をしてから、でもクリスマスはイエス様の誕生日なのだよ、忘れないでね、と念押しをしているわけです。

 ところが、昨年の終園日の礼拝のお話は、例年とはちょっと違ったものとなってしまいました。

 と言いますのも、お話の準備をしていて、わたしがサンタさんについてのあることに気づいたからです。

 よく言われますように、赤い服を着て白いひげを生やしたサンタさんのイメージは、コカ・コーラがコマーシャルのために生み出したものですが、しかし勿論、このサンタの原型となった歴史上の人物がいるわけです。それが聖ニコラオス(ニクラス)です。

 聖ニコラオスは、4世紀のローマ帝国のリキア州ミュラの主教だった人で、結婚するお金のない女性の家に金貨の袋を投げ込んだ、死んだこどもを生き返らせた、海路エルサレムに向かった時に暴風を静めた等の逸話が残されています。

 このように慈愛に富み、奇跡も行ったニコラオスは、その死後、教会によって「聖人」とされました。だから「ニコラオス」は「聖」(=セイント)ニコラオスと呼ばれるわけです。

 そこでわたしがはっと思ったのは、サンタクロースという名前のことです。

 「サンタ」とは勿論、「セイント」=「聖」のことです。そして名前に「聖」のつく聖人は、すべて死んだ後に列聖された人なのです。

 ですから、サンタクロースが「サンタ」=「セイント」である限り、サンタさんもまた一度死んで、その後に聖人とされた人ということになるわけです。

 というようなことまで考えてしまいますと、さてこのサンタさんのことをどのようにこどもたちに説明しようか、となったのです。そこで考えた末に、礼拝ではそれぞれの年齢に合わせてですが、次のようなお話をすることにいたしました。

 「みんな、クリスマスは何の日か知っていますか。そうだよね。クリスマス礼拝をみんなで守った時に覚えたように、クリスマスはイエス様のお誕生をお祝いする日です。

 でもクリスマスの日にはプレゼントを持って来る人がいるよね。それは誰ですか。(こどもたちから「サンタクロース」との声が出る)そうそう、サンタさんだよね。

 でもみんな知ってる。サンタさんもイエス様のことをちゃんと信じていた人なんだよ。(こどもたちから「えっー?」との声があがる)

 サンタさんの本名は、セイント・ニコラオスさんって言うんだ。ニコラオスさんはイエス様を信じて、イエス様のように人を愛して生きたんだよ。だからニコラオスさんは死んだ後で、神様から永遠の命をいただいんだ。(ローマ・カトリック教会や東方の正教会においては、「聖人」とは「聖化」された人、「神化」された人であって、要するに復活の命と体に与った人とされている)

 だからこのニコラオスさん、つまりサンタさんは今も神様と一緒にいて、神様のところからみんなのところにプレゼントを運んで来てくれるんだよ」

 ここまで詳しい話をしたのは年長さんだけで、さすがに年中さん、年少さんにはもっと簡単にお話をしたのですが、さてどこまでこどもたちにこのお話が通じたことでしょうか。

 でも幸い、その翌日にひとりの園児が、「先生、昨日のお話で先生が言っていたサンタクさんの本当のお名前なんて言ったかな」と聞いてくれて、少し救われた思いになりました。

「サンタさんは妖精なんだよ」等の説明をこどもさん方にしている保護者もいるのでしょうが、でもわたしの考えた説明もまんざらではないのでは、と思っている次第です。

 イエス様を信じて生きたサンタクロースは、今永遠の命に生きて、神様のもとから毎年プレゼントをみんなのもとに運んでくる、これからもこのお話を、二学期の終園日にはこどもたちにしてあげようと思っています。

(甲子園教会牧師・むこがわ幼稚園園長 佐藤成美)